« 宮崎本物温泉⑫「阿母ヶ平鉱泉」 | トップページ | 認知症と共に生きる »

2007年10月 8日 (月曜日)

思いを知ることの難しさ

 認知症の行動障害に対して、安易に薬や行動抑制を用いることはあってはならないことだと思う。徘徊や妄想などの様々な行動障害は、もちろん脳の障害を原因とするものであるが、それ以外にも、その人が置かれている環境や「その人となり」を通して、ひとり一人異なった形で症状が現れてくる。このような行動障害に、安易に薬などを用いることは「ひと」としての自然な反応まで奪ってしまうことになる。従って、先ずはひとり一人の生き方に寄り添えるような関わりがあるというのが認知症ケアの原則のような気がする。

 しかし、「その人の思い」や「その人らしさ」を大切にしたケアなんて、口で言うほど簡単なものではない。そもそも、私をはじめ、どれだけの人が「その人らしさ」の真の意味を理解していると言えるのだろうか。パーソンセンタードケアの提唱者Tom Kitwoodは「その人らしさとは、関係や社会的存在の文脈の中で、他人から一人の人間に与えられる立場や地位である。それは人として認めること、尊重、信頼を意味している」と定義付けているが、未だに私自身はピンときていないところがある。

 ところで、先日、左腕に3箇所も立派なミミズ腫れができた。その相手は家内ではない(今回は・・・)。実は、Aさんという認知症の女性の方である。まぁこれも「その人らしさ」への無知から生じたものであるのだが・・・。

 Aさんの性格を記した欄には、「短気、癇癪もち、ひがみっぽい」と記載されている。確かに病棟の中でも、すべてにおいて自分を優先して扱わないと大声を上げたり、他人を批判したりする。例えば、私が他の女性患者さんの車椅子を押していると「そんなババアの世話をして馬鹿が!」と罵声を浴びせてくる。もちろん自分の要求を妨げるものは、職員であろうが何であろうが御構い無しに攻撃してくる。だから生傷も絶えない。

 先日も入浴日に、男性達が入浴の順番を待っていると、先頭の男性を押しのけて「わしが一番じゃかいな!」と割り込んできた。割り込まれた男性は情けないかな泣き出してしまい、その姿を見て「ざまーみろ」と舌を出してからかいだす始末。その状況を見かねて「いい加減にしなさい」と声をかけAさんを連れて行こうとしたときに腕を引っ掻かれてしまったのだ。連れて行く途中も「いいか!一番ぞ・・・わしが一番ぞ・・・(と言いながら泣き崩れた)」と訴えていた。執拗に訴える「一番ぞ」という言葉。その言葉の裏に、もしかしたら「誰よりも私を大事にしてほしいのに・・・」という思いがあったのかもしれない。

 次の日、朝食後「トイレに行かなくて良いですか?」と一番に声を掛けてみた。昼食の時も一番に配膳してみた。そんな小さなことを積み重ねて一緒にいる時間を増やしていくと、なぜかその日は、いつもの「一番ぞ」が半分くらいになっていた。

 「その人の思い」や「その人らしさ」を理解するために本人の「思い」の断片を集める、家族に本人の人生の物語を教えていただく。そして、もしかしたらこんな「ひと」だったのかな?こういう思いなのかな?と想像力をフルに働かせてみる。しかし、「思い」や「その人らしさ」の、ほんの一面しか見えてこないため、時にもどかしさが募る。それでも「ひと」を大切にしたケアを追及していきたいと思うのである。それが本当に認知症の人が求めるものであるならば・・・・・。

« 宮崎本物温泉⑫「阿母ヶ平鉱泉」 | トップページ | 認知症と共に生きる »

認知症のケアとリハ」カテゴリの記事

コメント

大変なお仕事ですね。
私を育ててくれた親でさえ、その性格を把握しきれずに時々失敗!
また、時として私が知らなかった一面を発見して微笑ましく思ったりしています。
大勢の認知症の方を・・・それも、その方が元気だった頃を見ているわけではない状態で介護なさるのですから・・・
お仕事とはいえ、頭が下がります。

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/161660/6229567

この記事へのトラックバック一覧です: 思いを知ることの難しさ:

« 宮崎本物温泉⑫「阿母ヶ平鉱泉」 | トップページ | 認知症と共に生きる »

プロフィール

  • Kinngyo1

    宮崎県在住。 金星人(+)の霊合星人。 愛する3人の子どもと愛されていない鬼嫁を家族に持つ、しがない中年オヤジのブログです。

宮崎県のお気に入り温泉

  • あすなろ温泉(小林)

    P1060022

  • あきしげ温泉(えびの)

    Aki6

  • 神の郷温泉(小林)

    Dvc00291

  • 湯之元温泉(高原)

    Dvc00180

  • 丸新荘(北郷)

    Dvc00224

Raleigh RS-R

  • 2014021308470000_6

我が家の金魚たち

  • 土佐錦魚

    P1070792

    P1070879

【小次郎】

  • P1050803

おすすめBOOK

  • 認知症に関する本の紹介
  • 作業療法に関する本の紹介
2015年4月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30    
無料ブログはココログ

リンクバナー

  • Img76215


    相互リンク募集中!リンクフリーです。リンクされる方は上記のバナーを御自由にお使い下さい。

管理人お勧めの1本

  • 漫画『美味しんぼ』(95巻)で特集された蔵元としても有名な軸屋酒造。北薩摩に佇む紫尾山の清く澄んだ地下水と県内産のサツマイモで作り上げた一品。紫尾町は良質の温泉でも有名なところですが、蔵元自慢の水の良さと非常にバランスがとれて雑身を感じさせない一本です。

最近のトラックバック