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2007年10月10日 (水曜日)

認知症の人は何もわからない?

 認知症の人に「何か困ったことはありますか?」とストレートに尋ねると、大方「何も困るようなことはない」との反応が返ってきます。では、彼らは本当に思い悩むようなことはないのか?何も分からなくなっているのでしょうか?実はそうではなく、ゆっくりと時間をかけて、関係を深めていく。そうすると認知症を抱えながら生きていくことの辛さ、悩みを打ち明けてくれることがあります。

 Aさん「私は仕事一筋の人間でしたから・・・・一生懸命やってきました。でも仕事を離れたら、仕事が一番という感じはなくなりました。何かやりたいことはありますけど。(例えばどんなことですか?)・・・・・う~ん?何がというのは分かりません。最近は物忘れが多くなって困りますね。(どんな時が一番困りますか?)・・・・・?ちょっと思いつきませんけど・・・・・辛いですね・・・・・。この前も集まりがあって、まとめ役を頼まれたのに、すっかりそのことを忘れていてとても困りました。私は義理堅い人間なので、人に借りたものはしっかり返すことにしていますが、預けたものをよく忘れて分からなくなってしまうことがあります。今の私にとって大切なものは・・・・・お金と近所との付き合い・・・・それと女房のことですね。近所付き合いは大切ですよ、でも影で色々と悪口を言ったりされるのは嫌ですね・・・難しいことです」

Bさん「皆に責められて辛いです。ああしなさい、これが駄目って・・・・。この前も、私が朝早く起きだしてくるからお母さんが疲れるのよ!と娘に責められました。私も不自由な体で右を出せといわれても思うようにならない体なのに、皆勝手なことばかり言う。一番辛いのは、何もかも思うようにできない私であることを少しは分かってもらいたい」

これは、私が関わってきた認知症の人たちの思いの一部です。「認知症になれば、本人は何も分からなくなる。死の恐怖すら感じなくなるのだから幸せだ」と、一昔前までは言われていました。実際、私自身も、そう思い込んでいたところがありました。しかし、このような認知症の人たちの思いを知れば知るほど、「認知症になると何も分からなくなる」という思い込みが、とんでもない誤りであったということに気付かされます。

 クリスティーン・ブライデンさんは、御自身の講演の中で、『認知症の人は「どうせ何を言っても分からないだろう」という社会的偏見の中で、社会的に孤立し、治療を進められず、常に周囲から奇異な行動がないか見張られ、積極的に意見を求められるようなこともなくなっていく。そして、家族や友人から次第に遠ざけられ、社会的な役割も期待されなくなり、結果として引きこもりや放置される存在になっていく』と述べられています。

 周囲の、このようなマイナスイメージによって、その人が本来もっている能力は完全に失われてしまうかもしれません。認知症ケアのためには、認知症という病気を理解するだけでなく、「認知症の人がどのような世界を生きているのか」という視点で彼らを理解し、マイナスのイメージを転換していくことが、より良いケアの第一歩になるのではないでしょうか。

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コメント

トラックバック、ありがとうございました。
私も、同感です。
認知症の人は、何もわからないわけではないのです。自分が壊れていく事に、悩み、苦しみ、不安になり・・・
3~4年前、父は私によく電話をかけてきました。「お姉ちゃんどうしよう・・・頭がバカになっちゃったよ・・・壊れちゃったよ」と!今、思うと母や妹に言えずに一人苦しんでいたのだと思います。
その時は、認知症の人は、自分は正しく、トラブルの原因を他人のせいにする。自分が認知症と言うことは認めないと言われていましたので、「年のせいよ!」と軽く受け止めていました。もっと早く気づいてあげられたら・・・と、今は思いますが・・・
今は、母がわからなくなっていくことへの恐怖と戦っております。
私には、見守ることしか出来ませんが・・・

コメントありがとうございます。お父様の介護が大変なご様子で・・・ご苦労様です。
「私には、見守ることしかできませんが・・・」とありますが、「見守る」ことも大切な役割ですよね。以前、介護者の集いを行った時に、ある介護者の方が「私の愚痴を聞いてもらえるだけで、介護の勇気が湧いてくるんです」と言われていましたが、直接介護されている方の心のサポートをしてあげることが、結果、お父様の良い状態に繋がっていくことと思います。微力ながら、このブログを通して「認知症の人」や「介護されている方」の何かヒントになるようなことを書いていけたらと思っています。これからもよろしくお願いします。

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