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2008年1月13日 (日曜日)

認知症と環境

 知人から認知症の父を施設に入所させることにしたと聞かされた。彼は、「海は見えるし、素敵な絵やピアノが置いてあったり贅沢な雰囲気なんだ。きっと親父も喜んでくれるよ」と施設を選んだ理由を教えてくれた。

 認知症の人にとって、適切な環境を提供することはとても大切なことである。例えば、生活単位をできるだけ小規模化し、視覚的にも入居者が空間を把握しやすい構造にすることで、見当識の混乱を防ぐことができるだろう。椅子やテーブルの高さ、使用する補助具を工夫することで自立能力を高めることもできる。このように環境のあり方を考慮することによって、認知症の人は、快適で安心した暮らしを取り戻すことができるかもしれない。しかし、環境のハード面ばかり充実していても、ソフト面が疎かであればどうしようもない。これは当然のことである。

 では、どのような環境が求められているのだろう?原因は一方にだけあるとは限らない。認知症の人が、ある環境で快適に安心した暮らしができるか否か?と考える場合、環境のことばかり考えるのではなく、当事者の問題も考えてみる必要がある。

Tessa PerrinとHazel mayは「Wellbeing IN DEMENTIA An Occupational Approach for Therapists and Carers」の中で、重度の認知症の人にとって、物理的環境は一般的に考えられているよりも影響が少ないとされると述べている。このことは、認知症ケアの場面で作業とWellbeingを測定するためにDCM(Dementia Care Mapping)を行った結果、暗く、狭苦しく、混み合っていて、絶え間なく騒々しく、Kitwoodがいうところの「悪意に満ちた社会心理」の環境が、静かで広々として、ふんだんに装飾された施設や美しいデザインの小規模な施設環境よりも高いWellbeing scoreを示したことに根拠を置く。

 理想的な環境であれば、認知症の人にとっても良いに決まっていると思い込んでいたのだが必ずしもそうではないらしい、これはどういうことなのだろう?

 認知症の人がもつ認知能力の低下は、幼児期の認知発達段階(Piaget)を逆行する過程を辿る、という考え方があり、これは多くの人に支持されていると聞く。つまり、認知症が重度化(Piagetのいう前操作期)してくると、認識できる世界が次第に狭まってきて自己中心性が増大してくる。それゆえ、美しく装飾されたものや景色のすばらしさも彼らが認識している世界には届かない、という結果になる。だから、物理的環境から受ける影響も少なくなるというわけである。

 これは、適切な物理的環境を提供することが、重度の認知症の人にとって意味がないというのではなく、それだけでは不十分であると言いたいのである。自己中心性の増大した重度の認知症の人たちには、私たちの方から積極的に彼らの世界に足を踏み入れて関わっていく、寄り添っていく、そんな関係性が存在する環境こそ、重度の認知症の人たちには必要なのである。

参考文献:「認知症へのアプローチ~ウェルビーイングを高める作業療法的視点~」

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コメント

こんばんは。ごぶさたしております^^
この記事、興味深く読ませていただきました。認知症の方にとって環境は大切である、ということは学校でも先生から聞いていました。(例えば、やり方を変えたら洗濯機が使えるようになった…など)でも大切なのは物理的な環境だけじゃないんですね。記事の中間部分‘暗く、騒々しい環境のほうが、美しい小規模な施設環境よりも高いWellbeingスコアを示した’というところにはとても驚かされました。
認識している世界が狭い方たちに寄り添う、そんな関係…人的な環境にしろ物理的な環境にしろ、それが大切なんだなと感じました。
貴重なお話をありがとうございましたm(u u)m

こんにちわ。休みなのに雨、そう考えていた去年までの私。今は程よい湿気大歓迎です。あたりまえのことを書いていると思いましたでもこれをわかってないままに介護・医療の現場でかかわりを持っている人が多数いたとしたら、かなり残念なことですね。現場に入る前にしっかり教育していただきたいと思います。色々な問題も改善されると思います。

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